酒(アルコール)の危険性と害
酒(アルコール)の危険性は…
酒は「百薬の長」と称賛されるように、昔から健康に良い飲み物とされてきました。しかし、飲む人の体質や飲酒習慣によっては毒にもなります。ここでは、飲酒が健康に及ぼす悪影響について説明します。
酒に弱い人が無理に飲酒したときの悪影響
飲酒によって体内に吸収されたアルコールは、2種類のアルコール分解酵素によって分解されます。まず、肝臓に多く存在するアルコール脱水素酵素によって酸化され、アセトアルデヒドという有機化合物が生成されます。次に、肝臓・心臓・腎臓・筋肉に多く存在する2型アルデヒド脱水素酵素( ALDH2 )によってアセトアルデヒドが酸化され、人体に無害な酢酸に変化した後、尿に混ざって排泄されます。
アルコールはこのようにして無害な物質に分解されてから体外に排泄されますが、アルコール分解酵素の活性(反応促進能力)には個人差があります。それは ALDH2 の遺伝子タイプによって決まる遺伝的な体質です。日本人の場合、半数近くの人の ALDH2 は分解の遅いタイプかまったく分解能力のないタイプであり、この人たちは酒に酔いやすいか酒をまったく飲めない人たちです。
そのような酒に弱い人が飲酒をすると、体内には長時間にわたってアセトアルデヒドが分解されずに残ります。アセトアルデヒドには毒性があり、それが悪酔いの原因となりますが、それ以上に問題なのは、アセトアルデヒドが危険な発癌性物質である点です。国連の WHO 世界保健機関は、飲酒によって摂取するアルコール(エタノール)から体内で生成されるアセトアルデヒドを発癌性物質と断定し、肝癌、食道癌、喉頭癌、咽頭癌、口腔癌、大腸癌および女性の乳癌の発症リスクを高めると警告しています。酒に強い人は ALDH2 のアルデヒド分解能力が高く、適量の飲酒であればアセトアルデヒドの影響を比較的に受けにくいと思われますが、酒に弱い人は少量の飲酒でもその悪影響を受けますので、癌予防のためになるべく飲まないようにした方が良いでしょう。
アルコール依存症とそれによる身体的な悪影響
アルコール依存症は、アルコールの持つ依存性によって飲酒による快感や高揚感に執着し、自分の意志で飲酒をコントロールできない精神疾患です。アメリカ精神医学会の定めた診断基準によれば、以下の内の2項目に該当する場合をアルコール依存症と診断します。
1. アルコールに対する耐性がついている。(酒が強くなった、酔いにくくなった)
2. 禁酒や節酒をすると離脱症状が現れる。(手の震え、発汗、不快感など)
3. 禁酒や節酒をしたいと思いながら失敗している。
4. 飲酒の量や飲酒にかける時間が増えた。
5. 飲酒や酒の購入のための外出と酔い醒ましに多くの時間を費やしている。
6. 飲酒のために仕事や趣味の活動が減っている。
7. 飲酒によって精神的・身体的に不健康な状態にあることを自覚していながら、飲酒を続けている。
アルコールの依存性は麻薬・覚醒剤やたばこほど強くありませんが、常習的な飲酒によって誰でもアルコール依存症にかかる可能性があります。また、アルコール依存症にいったんかかると、アルコールに対する耐性がついているため、飲み過ぎの自覚のないまま確実に酒量が増加します。その結果、肝臓の負担が増大し、肝細胞が破壊される肝炎を発症したり、肝臓に中性脂肪が蓄積される脂肪肝が進行します。また、その他の危険な疾患としては、膵炎や心筋症など致死性の病気の原因ともなります。アルコール依存症は、酒に強い人ほどかかりやすい病気ですので、飲酒に際しては常に適量を心掛けてください。
酒に弱い人は少量でも癌発症のリスクが高まります。
酒に強い人ほどアルコール依存症に要注意。
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