除光液の危険性と害
除光液の危険性は…
除光液(リムーバー)の主成分は、マニキュアやジェルネイル・スカルプチャーを溶かすことのできる有機溶剤であり、アセトンがもっとも多く用いられています。アセトンという化合物は人の体内でも自然と生成されて排泄されるものであり、けっして人体に有害なものではありませんが、それを主成分とする除光液は脱脂性が強いため、爪の表面が黄色く変化することや滑らかさを失うことがあります。そのため、爪に対する影響が比較的に小さいとされる酢酸エチルやMEK(メチルエチルケトン)を主成分としたノンアセトン除光液も販売されています。なお、有機溶剤に特有の匂いも、ノンアセトン除光液の方が弱くやさしい香りです。
除光液の危険性 気化した有機溶剤の害
主成分の有機溶剤には、とても気化しやすいという共通した特性があり、気化した高濃度の有機溶剤を吸引すると頭痛や気管支炎を引き起こし、意識を失うこともあります。そのため、美容専門学校などのネイリストの実習室では、つねに換気に配慮し、使用済みのコットンはすぐにキャニスター(蓋付き密封容器)に入れ、除光液の容器は手押しポンプ付きにすることが常識になっているそうです。
実際にあったアセトン除光液の健康被害
夏の終わりのある夜、生後2か月の赤ちゃんを床に寝かせ、母親が換気をせずにすぐ近くで手足のマニキュア落としをしました。赤ちゃんは苦しそうな声を数回上げた後、ぐったりとした様子で12時間以上寝続けました。翌日、授乳のために起こしましたが、吸う力は弱く、嘔吐を繰り返し、反応も鈍く、意識がはっきりしない状態でした。母親が異常に気づいて病院に運び、アセトン中毒と判明しました。
この赤ちゃんは、幸い順調に回復し、4日後、元気に退院することができたそうです。その後、日本小児科学会の生活環境改善委員会が専門機関に依頼し、この事例が起きた状況の詳細な再現実験を行いました。その結果、母親が除光液を使用したことによる空気中のアセトン濃度は、母親の顔付近(床面から約70cm)では 90ppm でしたが、赤ちゃんの顔付近(床面から約10cm)では 1200ppm に達していたことが判明しました。90ppm で体に異常を感じることはありませんが、1200ppm は危険な値です。アセトンは空気よりも重いため、締め切った部屋の中で床面近くに滞留したものと判断されました。
除光液を使うときは、かならず換気しましょう。
赤ちゃんがいる部屋では特に気をつけて。