水で膨らむビーズの危険性と害

水で膨らむビーズの危険性は…

水で膨らむビーズは、直径1mm～15mm の球形（または直方体）をしたインテリア・園芸用品です。吸水性ポリマーと呼ばれる吸水性・保水性に優れた高吸水性樹脂（ポリアクリル酸ナトリウム）を素材とし、乾燥時の重量の数百倍から数千倍もの水を吸収して保持することができます。水を吸収すると大きなものでは直径5cm ほどに膨張し、弾力性のあるゼリー状になります。ビンやグラスに入れてカラフルで透明感のある室内の装飾として使われ、また、水分を徐々に放出する性質から、フラワーアレンジメントのデコレーション素材としても人気があり、観葉植物の培養土の代わりにも使用されます。

吸水性ポリマーは、紙おむつ・生理用品の機能を革命的に向上させた素材として知られるだけでなく、化粧品・医療用品から食品添加物に至るまで、目立たないところでも多彩な工業分野で活用されている大変優れた素材です。しかし、水で膨らむビーズは小さな飴やグミに似ているため、子供の誤飲による健康被害が以前から懸念されてきました。そして、実際に深刻な誤飲事故が発生しています。

　水で膨らむビーズの誤飲による重篤な障害の実例

2015年6月、嘔吐が続いて衰弱している2歳の女の子を連れた保護者が近所の病院を受診しましたが、原因不明で症状の改善も見られないため総合病院を受診。超音波検査の結果、先天的な十二指腸の狭窄が疑われ、さらに詳しい検査が行われました。しかし、原因が特定できない（吸水性ポリマーはX線画像に映らない）ため、入院の4日後に開腹手術を行い、異物による十二指腸閉塞であることが初めて判明しました。異物は摘出されましたが、異物によって十二指腸への胆汁と膵液の分泌が阻害されていたため、肝臓障害と膵炎を併発していました。しかし、子供は9日間の集中治療によって回復し、手術後20日目に退院できました。

十二指腸内から摘出された異物は、直径約4cm のボール状に膨張した水で膨らむビーズでした。保護者から提供された同じ商品は、袋に入った状態では直径約15mm の飴かグミのような形状をしています。胃の消化液では大きく膨張しにくい素材であるため、十二指腸内で水分を吸収して膨張したものと考えられています。どのような状況で子供が飲み込んだのかは不明ですが、水で膨らむビーズの誤飲による重篤な障害としては国内でもっとも重い症例です。

（出典・国民生活センター「幼児が水で膨らむボール状の樹脂製品を誤飲」2015年10月1日発表）　

　水で膨らむビーズの安全上の注意点

水で膨らむビーズの主原料である吸水性ポリマー（ポリアクリル酸ナトリウム）は人体に無害な素材であり、国民生活センターの調査でも有害性は認められないようです。しかし、上記の誤飲事故以外でも、2012年にはアメリカで生後8ヶ月の子供の誤飲による腸閉塞で開腹手術が行われた事例があり、その際には全米・カナダで製品の自主回収が行われています。また、日本でも、2011年に10歳の女の子が耳の中に入れてしまい、水を含んで膨張したため、緊急手術で摘出した事故が発生しています。

誤飲しても比較的に小さなものであれば、大便といっしょに排泄されるようです。しかし、排泄されなかった場合や、耳・鼻などで膨張した場合、子供は大きな苦痛をともなう健康障害の危険に直面することになります。乳幼児がいる家庭において水で膨らむビーズを使用する場合は、事故を予防するために、子供がビーズに触れることのできない使い方を工夫することと、未使用のビーズを子供の目に触れない場所に保管することが必要です。

水で膨らむビーズは乳幼児が触れない使用法を考える。
未使用のビーズは乳幼児の目に触れない場所にしまう。