ヘリウムガスの危険性と害
ヘリウムガスの危険性は…
ヘリウムガスは水素ガスと同様の軽い気体であり、人体に無害で不燃性でもあることから、私たちの身近なところでは風船や飛行船・気球の浮揚ガスとして利用されています。
このヘリウムガスを吸引すると、奇妙な甲高い声になります。ドナルドダックの声に似ているので、「ドナルドダック効果」とか「ドナルドダックボイス現象」と呼ばれています。この現象は、断熱圧縮・膨張によって音波を伝える気体の性質上、ヘリウムガスのような軽い気体ほど音速が速くなり、同時に音波の振動数が大きくなるために起こります。つまり、声帯の振動が気道から口腔を経て声となるとき、そこにヘリウムガスが充満しているために空気中の通常の音速よりも速くなり、振動数も大きくなって甲高い声になります。
この現象によってのどや声帯が損傷することはなく、呼吸によってヘリウムガスを排出してしまえば、もとの声に戻ります。しかし、以下のように、体に悪影響を与える場合がありますので要注意です。
〈変声用〉と〈風船用〉 2種類の家庭用ヘリウムガスボンベ
家庭用として販売されているヘリウムガスボンベには、大きく分けて2種類のものがあります。ひとつがドナルドダック効果で遊ぶための缶入りスプレー式(エアゾール式)です。パーティグッズやおもちゃとして販売されています。吸い込んでも呼吸困難にならないよう、ヘリウムガスのほかに酸素ガスが約20パーセント混合されていて、空気とほぼ同じ酸素濃度です。
もうひとつは、風船に詰めて浮揚させるためのボトル入りのヘリウムガスボンベです。こちらは、ヘリウム100パーセントの高純度のガスで、風船に紐を結んで子供が手に持って遊ぶためや、風船を部屋に浮かべてパーティの飾りにするためなどに使用します。人が吸引することを前提とした商品ではありませんので、風船を膨らませること以外の目的で使用しないように、注意説明がボトルに明記されています。
ヘリウムガスの吸引による酸欠事故
変声用のスプレー式ヘリウムガスには、酸素ガスが約20パーセント混入されています。しかし、それでも吸い過ぎると酸欠状態に陥る場合があることを、厚生労働省の「家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」が伝えています。その一例は、以下の通りです。
ヘリウムと酸素の混合ガスによる7歳女児の事例(平成24年度)
「子供が声の変わる玩具を吸いすぎて、意識消失した。背中をたたいたところ意識は改善した。その後、嘔吐が出現した。」
また、風船用のヘリウムガスボンベ(ヘリウム100%)は、人が吸引しやすいようには造られていませんが、以下のような吸入事故の事例が紹介されています。
風船のヘリウムガスによる3歳女児の事例(平成23年度)
「空気中で浮く風船を店で貰った。子どもが吹き込み口にストローを挿して、中のガスを吸った。その後、フラフラ歩いてきて真っ青になって倒れたが、10秒ほどで泣き始めて、いつもどおりに戻った。」
このように、ヘリウムガスの吸引による酸欠事故は、酸素が入っている変声用のスプレー式でも発生し、すでに風船に詰められたヘリウムガスでも発生しています。この病院モニター報告の掲載件数はけっして多くありません。しかし、それは氷山の一角に過ぎません。また、患者の約97パーセントは12歳以下の子供ですが、病院で診察を受けていない成人の事故経験者がいることも容易に推察できます。
特に子供は、変声用ヘリウムガスの吸い過ぎに注意。
風船のヘリウムガスは、人が吸うものではない。
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