有毒魚の危険性と害
有毒魚の危険性は…
毒のある魚としてもっとも有名なのが、フグ(トラフグなど)です。ふぐ料理の店はすでに第二次大戦前から西日本を中心に普及していたようですが、戦後、全国的に人気が出て、その毒による死者も増加しました。そのため、現在では食品衛生法によって一般消費者に対する切り分けていないフグの販売は禁止され、自治体によるふぐ調理師資格や取扱店舗・施設の規制もきびしく実施されています。したがって、私たちが専門料理店で食べるふぐ料理や水産業者から購入するフグの切り身は十分に安全なはずです。
大変危険! バラムツ、アブラソコムツ、オニカマス
フグ以外にも毒のある魚はたくさんいますが、現在、私たちが食材として注意すべき危険な魚は、バラムツ、アブラソコムツ、オニカマスの3種類です。いずれもかつては刺身・魚料理の材料や加工食品の原料として販売されていました。しかし、現在では、食品衛生法により健康被害を与える危険な有毒魚として販売が一切禁止されています。したがって、通常は私たちが口にすることのない魚ですが、レジャーフィッシングの獲物として釣り上げたときに食べてしまう危険性があります。また、海外では現地の法律で規制されていない国が多く、人気食材の魚(サケ・タラなど)に偽装する悪質な事例さえ少なくないようです。気がつかずにまとまった量を食べた結果、激しい食中毒の症状が現れるだけでなく、体質や健康状態によっては死に至る危険性もあります。
バラムツ 、 アブラソコムツ
バラムツ(上)とアブラソコムツ(下)は、同じ種類の深海魚です。バラムツは体長が最大約3メートルにもなり、アブラソコムツも最大約1.5メートルと大きな魚です。日本近海では駿河湾以南の太平洋や東シナ海に棲息しています。浮き袋がなく、比重が水より小さい油脂成分を筋肉中に多量に含むことで浮力を得て、最深1.000メートルの深海から沿岸の浅海まで自由に行き来しているようです。そのため、サケ漁の延縄(はえなわ)やルアーフィッシングの針にかかることがよくあります。
どちらも切り身にすると脂の乗りが大変によく、きれいな乳白色をしています。しかも、臭みがなく、鍋料理でも煮崩れしないという特長があります。刺身にするとマグロの大トロよりも美味とさえ言われています。しかし、その旨味を作り出している脂の主成分は、人の体内でまったく消化されないワックスエステル(蝋の成分)であり、下痢を引き起こします。しかも、旨いからと食べ過ぎた場合、半日後には激しい下痢に襲われた後、便意がなくても黄色いワックス成分が長時間にわたって自然と流れ出てくるという悲惨な状況になります。
バラムツとアブラソコムツは、多量に摂取すると体に重大な障害を起こす可能性のある危険な魚です。自分で釣った場合でも、食べる量は刺身4、5切れ程度にしておきましょう。また、食用魚としての販売が禁止されていない海外からのニュースによると、中国ではサケと偽って調理しているレストランが少なからず存在しているようです。寿司ブームで日本食レストランが増えたアメリカでも、ホワイトツナ(白マグロ)と称して寿司ネタに使用している店が大半を占めているそうです。海外旅行で食事をするときも要注意です。
オニカマス
カマスの最大種で、体長約2メートルの大物もいます。世界中の暖かい海に棲息し、英語名・バラクーダでゲームフィッシングの対象となっています。日本では沖縄・小笠原のほか、九州周辺の海域や相模湾以南の太平洋側にも分布しています。ただし、健康被害の原因となる毒(シガトキシン)は主に珊瑚礁の海で繁殖するプランクトンが生成し、食物連鎖の頂点に立つオニカマスに蓄積されたものと考えられます。したがって、珊瑚礁のない海域のオニカマスは、毒性がさほど高くないようです。
シガトキシンは、神経細胞に強い影響を与える神経毒の一種です。摂取したときの症状としては、ドライアイスに触れたような皮膚の温感異常やめまい・頭痛・筋肉痛・麻痺といった神経系障害のほか、腹痛・下痢・嘔吐などの消化器系障害、血圧降下・心拍数の異常など循環器系障害が現れます。日本では、オニカマスのシガトキシンによる死亡例はありません。しかし、シガトキシンは加熱調理をしても分解されず、煮汁にも溶け出します。また、重症の場合は回復までに長期間を要しますので、試しに食べてみようなどと考えない方がよいでしょう。
バラムツ・アブラソコムツは刺身4、5切れまで。
バラクーダを食べるときは、地元の人に安全確認を。
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