温泉の噴気ガスの危険性と害
温泉の噴気ガスの危険性は…
温泉の噴気ガスとは、温泉地の湯元で水蒸気を含んで立ちのぼるガスのことです。温泉には、火山地域でマグマによって地下水が温められた火山性温泉と、火山地域以外で地熱(主にマントル由来の熱)によって地下水が温められた非火山性温泉があります。湯元で噴気が立っている温泉は、一般に火山性温泉です。代表的なものとしては、白根山の麓にある草津温泉(群馬県)や、箱根外輪山のカルデラ内にある箱根温泉(神奈川県)、鶴見岳の裾野に広がる別府温泉(大分県)などが挙げられます。いずれも火山の恵みとして温泉が湧き出し、その湯元の源泉からは白い噴気が立ちのぼっています。
火山性温泉には「硫黄の臭い」が付き物
噴気が立ちのぼる湯元の多くは、「地獄」にちなんだ名前が付けられた観光スポットとなっています。箱根温泉の湯元である大涌谷も、明治時代の初めまでは「地獄谷」と呼ばれていたそうです。
今年(2015年)、その荒れた大地の周辺で頻繁な火山性微動と地下の水蒸気圧による山体膨張が観測され、大涌谷を中心とするエリアへの立ち入りが規制されました。そのときには、源泉からの噴気の吹き出しも激しくなり、大涌谷の展望台周辺にも硫黄を燃やしたときのような「硫黄の臭い」が立ち込めました。このような噴気ガスによる「硫黄の臭い」は、箱根に限らず、火山性温泉の湯元ではよく嗅ぐことができます。
「硫黄の臭い」の正体は亜硫酸ガスと硫化水素
温泉の噴気ガスの成分は、一般にほとんどが水蒸気です。そのため、通常は白い蒸気が立ちのぼるように見えます。しかし、そのほかの成分として、火山ガス由来の二酸化炭素と亜硫酸ガス(二酸化硫黄)・硫化水素などが含まれています。この亜硫酸ガスと硫化水素が、「硫黄の臭い」の原因です。硫黄自体は無臭ですが、硫黄を燃やしたときには硫化水素が発生し、確かにこの臭いがします。また、硫黄酸化物である亜硫酸ガスも同じ臭いがします。
亜硫酸ガスと硫化水素は、どちらも人に重大な健康被害を与える危険なガスです。温泉の噴気ガスに含まれる量は一般に亜硫酸ガスの方が多く、硫化水素よりも亜硫酸ガスが主要な臭いの原因物質と思われます。このガスの名前は高度経済成長期の公害病によって有名となり、気管支喘息や気管支炎の原因となることがよく知られるようになりました。亜硫酸ガスの急性の中毒症状としては、高濃度の場合は数分で死亡し、呼吸困難を感じる中濃度でも長時間その中にいると危険だと言われています。また、硫化水素は、通常は比較的に低濃度とされていますが、高濃度の場合には亜硫酸ガスよりも危険であり、数回呼吸するだけで呼吸が停止し、死に至ります。それほど深刻な中毒でなくても、呼吸器系に重い後遺症を残す可能性があります。
このように、温泉の噴気ガスには危険な成分が含まれているため、「硫黄の臭い」が立ち込めているような湯元の源泉や給湯設備の管理業務に当たっている人は、つねにガスマスクを携帯しているようです。しかし、火山の火口や噴気孔と同様に、温泉地でも源泉周辺の危険なガスの濃度チェックが行われています。したがって、温泉地に旅行した際、有毒ガス発生についての注意情報が出ていなければ、「硫黄の臭い」について神経質になる必要はありません。
温泉の噴気ガスの危険性は、火山ガスと同じです。
温泉旅行で地元の注意情報が出ているときは慎重に。
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